長期の痛み止め連用は胃だけを荒らすものではありません
2024/06/09
先日若い男性が何日も前から便が黒いのですが、、、といって来院されました。尚、この方は肩の外傷で2か月以上も痛み止めを内服しているとのことでした。ここで大事な事があります。海苔の色のような黒色便のことをタール便といい、通常は胃か十二指腸から出血した場合が多いです。それとは別に肛門に近い大腸から出血した場合には赤黒い血液の混在を便に認め、その場合には血便と言うことが多いです。さて、一般には胃・十二指腸が出血源の場合にはその量が多く、重篤になりやすく、早急な対応が必要とされることが多いです。
さて先ほどの男性ですが、腹痛の訴えもなく、明らかな貧血所見なく全身状態良好と判断して翌日に当院で準緊急で上部消化管内視鏡検査をすることになり、その際の内視鏡写真が下記のものです。食道、胃と異常なく、さらに奥へ内視鏡をすすめると、十二指腸第2部という部位に入ったとたんに広範に鮮血が付着しているのを確認して、一瞬にして周囲の空気が張り詰めるのを感じました。(写真①)何回も洗浄・吸引操作を繰り返すと写真②の黒丸内のような出血点が複数確認できましたが、やっかいなことに2カ所はとても内視鏡がとどかない奥の方にあり、ちらちらと時折見える程度で、ここは内視鏡操作も困難な部位でした。そこで当院では観察のみとし、検査終了して転医の話を患者にしました。診断は薬剤による消化管粘膜障害からの出血であると思われるが、万が一違う疾患の可能性もあるし、いずれにせよ出血が持続して重篤になる可能性がありうるとしました。
しかし患者は断固入院は拒否されましたので、家人の見守り、数日の外出禁止、厳重な食事制限、各種投薬厳守、そして何よりも痛み止めの中止を約束させました。その後に再来院したところ、徐々にタール便は消失して、検査にて貧血も軽度な進行にとどまり大事にはならずに済みました。
このように消化器に痛み等の自覚症状を来たさなくとも、消化管粘膜には胃以外にも広く粘膜障害を引き起こす可能性がありますので、消炎鎮痛剤には処方する側、される側ともに注意が必要です。私たち処方する側はつい、若い丈夫な方だから大丈夫だろうと安易に消炎鎮痛剤を制酸剤・粘膜保護剤なしで処方することも行いがちであるし、患者に求められると安易に長期に消炎鎮痛剤を処方することも行いがちですが、あらためて薬剤には副作用には常に気をくばることが肝要と思われました。
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