御餅をよく噛まないで呑み込むと大変なことになります
2023/01/25
古くから日本人の食の一つとして親しまれてきた餅ですが、正月になると主に高齢者が誤嚥して不幸な転帰をとる事故報告を目にする事も多いです。しかし胃に入った餅でも問題となることを,今回経験しましたので、ここにご紹介いたします。
先週当院に、数日前からの心窩部痛を訴える中高年の女性が受診しました。当院では現在胃カメラは1か月待ちですが、たまたま翌日にキャンセル枠が出たこともあり、またその患者さんの差し迫った表情から、翌日に胃カメラ検査を行いました。すると胃の内部には長径5cmほどの大きな餅片を認めました(a)。また胃の出口側の幽門には複数の出血した痕跡がある潰瘍も認めました(b)。これは大き過ぎる餅が胃内異物として長期に停滞し、胃に障害をもたらしているものであると診断しました。直ちに何とかしなければならないと思考をめぐらせ、方法としては細かく砕いて自然に排出されるのを待つか、口から除去するかのどちらかの選択となりました。ただ砕くには十分に細かくしないと、小腸側で詰まって腸閉塞となってしまう危険性を考慮し、また時間もないので後者を選択しました。まず大きすぎて回収できない餅を、大腸ポリープ切除用のスネアにて2分割し(c)、それぞれを大腸ポリープ収集用のネット(d)にて収納して食道を通ってファイバーごと抜去する(e)ことを2回繰り返し、処置終了となりました。この際に餅がネットから脱落し気管に入り込んでしまうとそれこそ大変な事態になりますのでかなり慎重な操作を心がけましたが、想定通りの操作を数分で完遂できました。
患者さんによると、餅は10日前に急な来客で無理に飲み込んでしまった餅とのことでした。また処置直後からすっかり胃の症状は消失し、楽になったと大変喜ばれました。その後に文献等で調べてみますと餅は決して消化に良い食品とは言えないようで、このような事故は結構あるとのことです。餅はもち米のでんぷんであるアミロぺプチンでできており、熱を加えれば柔らかくなるが、胃酸では消化されずに大きいまま胃内に留まった場合には、胃内の低い温度では固まってしまい排出されなくなるそうです。要は餅でもよく噛みましょうということのようです。
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