便潜血検査の恐ろしい事実
2022/09/18
当院に初診される方の多くは、会社や市での健康診断の中に含まれる便潜血反応検査で陽性を指摘されて受診される方達です。その検査は基本的には2日法と言って別日の排便機会をそれぞれ別容器に採取して提出することで、1日分だった場合より正確なデータとなり信憑性が高まります。そして私達は持参された患者さんのその検診データを必ずチェックし、2回のうちの何回が陽性か、さらには過去2年分も並記されているデータも多いので、いつから陽性なのかをも確認します。また、最近では陽性となった場合のその血液の濃度も併記されていることが増えましたので、より情報としての質も高まりました。このように検査前からの情報収集をすることで、以下のような心構えをします。すなわち過去はずっと陰性で、今回のみ1回だけ陽性だった方などは、ごく小さな病変であろうか、もしくは今回たまたま肛門からの傷などがあったのであろうか?それでは細かく注意深く見なければいけないな。また逆に数年の間ずっと2回とも便潜血陽性が持続する方などはほぼ例外なく大きな病変を認めることが多いので、大きなポリープが発見された場合の器具やスタッフの準備状況を想起しながら検査に向かいます。
最近、そのような想定が覆った患者さんを2名連続して経験させていただいたもので、自身に対しての教訓としてもここに記載しようと思いました。その方たちとはいずれも過去2年の便潜血検査を施行して2年分の各年2回とも陰性の方で、今年のみ2回のうちに1回だけ陽性となり当院へ来院された方達です。上に述べたように、そうは大きな病変は無いだろうと想定し大腸内視鏡検査をしたのですが、いずれの方にもしっかりとした腫瘍性病変が発見されました。当院での生検後に他医へ紹介して2名とも腸切除の手術を施行し、病理組織学的に進行癌の分類となりました。いずれの方もしっかりとした病変であり、ここ1,2年で急に発生したものとは思えないので、昨年時であれば便潜血で完全に見落とされていたことになります。
これらのことを考察してみますと1人目の方(写真1枚目)の病変は肛門から遠く便の上流側の上行結腸にあり、ここではまだ便がサラサラとした水様ですので、病変部とこすれても出血しずらいためだと昔から教訓的によく指摘されいることではあります。2人目の方(写真2枚目)は肛門の極めて近い数センチの部位にある下部直腸に病変がある方です。この部位では硬い便と強くこすれて間違いなく病変から出血し続けているはずですが、検査にその結果が反映されなかったということになります。どういうことかと言えば、あまりに病変と肛門が近すぎると腸の中で便がこなれる機会なく排便されてしまいますので、便の表面の一部にしか血液が付着しないことになってしまい、採取の際にエラーがおこってしまうのです。あまり知られてないことですが、便検体の採取の際には「1点を突いて採取するのでなく、表面の広い範囲をコスるように採取しましょう」とされるのはこういうことなのです。
以上、よく患者さんから質問されることなのですが、検診で便潜血が陰性だからといって決して癌がないということにはならないということです。本当に大腸癌を心配される方ならば内視鏡検査を受けて安心することをお勧めさせていただきます。検診、特に大腸癌の便潜血検査は大変優秀とされ、多くの患者さんを拾い上げてくれていますが、検診にはあくまで限界があり、便潜血陰性には上記のような事例もありうるということをご理解いただけたらと思います。
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